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藁をも掴む気持ちで

曲も仕上がっていない上に2週間は動かせない手、ラヴェルの水の戯れは一度もレッスンで聴いて頂いていない、リストのソナタは半分も出来ていない、これは修了試験は間に合わない、留年するか試験を半期遅らせるしか手だてはない…そう思いました。
先生に連絡をして、手を怪我した事を伝え試験は無理かもしれないと告げると、声にならないようなはぁ、といった反応がありましたが、貴方、逆にラッキーかもしれないのよ、普通右手より左手の方が弾けないのだから、この期間に一生懸命左手の練習をしなさい、と言われ、そのコメントを聞きながら何かメラメラと闘志の様な物が湧いてきて、何でもやってやる、右手が使えない間でも左手は動くのだから何とかしてみせると、諦め気分を全部ひっくり返して、その日から命がけの毎日が始まりました。
左手だけの練習をして、右手は動かしたいのだけど、イメージトレーニングをすることではやる気持ちを抑え、本番のホールで弾いて居る自分をイメージしながら暗譜をし、右手が使える様になったらイメージ以上に弾けるよう、楽譜の細部からその奥の宇宙まで詳細に描けるようにイメトレをしました。傷が修復するまではギブスは外さないようにと言われていましたが2週間も待てず、1週間したら外して練習をしました。親指は細くなって力が入らず、右手がガクガクしましたが、痛くならない程度に動かして早めにリハビリを始めました。
薄氷を踏む毎日だったのですが、皆と同じ予定で試験を受け、結果一番でした。ベートーヴェンのソナタはどうでもいいミスタッチが多く残念な演奏でしたが、全体のまとまりはイメージトレーニングのお陰であり、危機を乗り越える事が出来たのだと思っています。

安佐北区 ピアノ教室 可部 長西純子ピアノ教室