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デムス先生の思い出 ②

ショパンのエチュード作品10-11はアルぺジョの練習の為に書かれた作品で、ハープで奏でるような美しい旋律が続きます。高音にメロディが来るので、バスはオルガンポイントのように朗々と響かせ、その上に美しいソプラノを歌うように乗せて弾くのですが、よく音を外しました。

どうしましょう。住む世界の違う巨匠が、しかし目の前の御仁は雷のような声を轟かせて何か指示をしている。恐ろしい大ピアニストが、怒鳴り散らして大人を泣かしているのを目の当たりにしたので、すっかり萎縮してしまい、順番前に逃げてしまいたいと心より願いました。もしかしたら、高校生はそんなに怒らないも・・・・???????なんて思ったのが甘かった。

2小節も弾かないうちにストップがかかり、何か大きな声でドイツ語で言われます。それを通訳の方が小さな声で、教科書みたいな訳文で伝えてくださるのですが、戸惑ってえっと・・みたいな様子を見せた途端、また何かドイツ語で(大きな声で)何かを言われました。早く、という事でしたが、はい、と答えて演奏のモーションに入る前にまた何か大きな声で言われました。言われたことに素早く反応しないことが非常に気に障ったようで、この点でも大変デムス先生を怒らせて心臓が縮み上がりました。また言われたことが直ぐに直せない、すぐに出来ない事も先生には大変気に障り、(当然ですが)、物凄い雷のような大声で、どうなっているんだ(多分)、幼稚園幼稚園としきりに言われました。身体が大変大きく、油圧式のベンチ椅子を一番下にしてもなお、身体が鍵盤に乗らんばかりの巨体です。指が特大のウインナーのように太いので、鍵盤からはみ出しそうです。それにも驚きました。冬なのに大量の汗をかき、目は怒りで燃えていました。今言っただろう!!みたいな事を何度も言われ、怖くて涙も出ず、必死に先生の要求に応えられるようにやっているつもりですが、ナイン、ナイン、何をしてもナイン。(ドイツ語のNo)生きた心地のしない1時間がようやく終わりました。

終わったときは手を差し出して、ぐぐっと力強く握り、よく頑張ったね、のような事を言われたのですが、もう、もう、そんな、、、、、、、、涙腺崩壊。それから師匠に電話をして、公開レッスンの模様をお話し、後日レッスンにお伺いしました。そうしたら、先生はニコニコして、純ちゃん、聞いたわよーーーと。力が抜けるではないですか。しかし、演奏をした後の感想は、今までと音が全然違うじゃない、でした。音が違うのか。。そうか。。公開レッスン後のしばらくはもぬけの殻でしたが、物凄い偉大な芸術家の神髄に触れる事が出来ただけで、その価値があったのでした。

デムス先生のレッスンは大学生になっても受けたのですが、懐かしい思い出です。

関わる事が出来て、良かったです。

 

 

 

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