パリ珍道中 ⑦

スリに遭った翌日、オペラ座近くにあるパリ警察署に向かいました。
ちょうどその日は日曜日で、中央警察署に当たる場所以外はお休みだったのです。
フランスは日曜日は警察署もお休みなんだぁと、変に感心しました。一晩越すと、だいぶショックも和らぎ、普通にお腹も空きました。全財産スられた訳ではなく、クレジットカードも無事で、それに用心深い性格なので、封筒に小分けして40ユーロほど別に保管していた残りがありました。
今日、明日で20ユーロずつに分けて、とりあえずメトロに乗ってオペラ座まで行きました。お金があれば、あそこで演奏会が聴けるのに…と思いつつ、昨日は神様の思し召しで、傷付いた人にS席のプレゼントがありましたから、不幸中の幸いに感謝しました。しかし、何故、私だけ狙われたのだろうかと、それを考えたら夜が眠れませんでした。同じように日本人と行動していたのに。それに、歩いている最中に歩調を合わせて、チャックをジーと開けてお財布だけ確実に選んでサッと消えたのです。
何かカバンに力がかかったのは感じたのですが、本当に微かでした。
彼らには、にわかの旅行者と長期滞在者が分かるんですね。悔しいし腹が立つし悲しかったですが、プロの仕事なんだなぁと、思うしかありませんでした。
さて、オペラ座近くの警察署に着いて、手短にスリに遭った事を説明しました。英語で頑張るつもりでしたが、後輩がフランス語で通訳してくれました。
調書を取ってくれたお巡りさんに、いくら財布に入ってた⁇と聞かれて、150ユーロくらい、と答えたら、それは日本円にしていくらだい⁇と聞かれました。およそ、1万8千円くらいですかね…と答えたら、書類に約10万円、と記入するではありませんか。びっくりして、10万ではなく、1万8千円くらいですがと口を挟むと、問題ない、と言ってまあいいから、とジェスチャーがありました。え⁇しかも、職業はピアノの先生と答えたのに、教授、と書いてあります。あの、それはそうなりたいけど…と内心思いつつ、私はプロフェッサーでなくて、ティーチャーですが…とまた、口を挟むと、全然問題ない、と再度言われました。
出来上がった調書を確認するよう言われて読むと、プロフェッサージュンコ◯◯◯は(◯は旧姓)ギャラリーラファイエット前を横断中にスリに遭ったと、あり、無くした総額はおよそ10万円であったと…。これでいい⁇と聞かれ、プロフェッサーじゃないとか金額水増しし過ぎとか言おうかと思いましたが、やっと、意味を理解して、はい、言いです。と答えました。じゃ、住所を教えてね、と言われて、番地から進み、安佐北区と言った時に、区ってなんだい⁇とまた聞かれて、もうどうでも良くなった私は、こちらで言う、通りの事です、と適当な事を言うと、rue asakitaと書かれてしまい、しまった、通りじゃあないな、なんだっけ⁇と考えている最中に調書が出来上がっていました。じゃ、3箇所にサインしてね、と言われ、漢字⁇アルファベット?とりあえずアルファベットでサインしました。
このように日本人の教授が高額な被害にあった事でお達しが行き、ラファイエット周辺の取り締まりや警備を強化されるのでしょう。
あそこは酷いんだぁとお巡りさんがつぶやいて、警察署を後にしました。

安佐北区 ピアノ教室 可部 長西純子ピアノ教室